形成外科(保険診療)
形成外科(保険診療)
「形成外科」という名前には、循環器科・耳鼻科・眼科などと異なり、扱う臓器の名前が入っていません。形成外科の対象は「顔を含めた全身の体表面」であり、目的は「外科的手段が必要な体表面の疾患に対して、機能面・整容面を考慮した治療により社会復帰を促進する」ことです。
診療内容は多岐にわたり、顔面骨骨折や広範囲熱傷を含む外傷・体表の先天異常・悪性を含む皮膚腫瘍の切除およびその再建手術・難治性潰瘍(褥瘡や糖尿病性潰瘍など)・美容医療などがあります。クリニックで対応できる疾患としては、皮膚や皮下の腫瘍、まぶたがあけづらい眼瞼下垂、生まれつきのあざ、腋臭症(わきが)、巻き爪・けがややけど、異常な傷あと(ケロイド・肥厚性瘢痕)などが対象となります。
治療対象が体表面であり、患者自身が目に見えるため心の負担となる疾患もあります。
単に疾患の治療だけでなく、その治療結果が健やかな社会生活を送れる一助となるかまで考えて診療する科です。
しこりや皮膚腫瘍を「良性だから置いといて大丈夫」と言われたことはありませんか?これは命にかかわらないから大丈夫という意味であり、しこり(腫瘍)が自然治癒するという意味ではありません。腫瘍なので徐々に増大し、腫瘍によっては大事な行事の前(旅行・結婚式・受験など)に膿んで痛みが強くなり処置が必要となってしまうことがあります。また、「良性だから」は確定診断ではありません。摘出した腫瘍を病理検査に提出することで診断が確定します。
外科的治療(手術)の目的は治療だけでなく確定診断も含みます。放置せず小さいうちに治療すれば傷跡も小さく済みますので、早めにご相談ください。形成外科では日々の診療で診察(視診・触診など)→手術→病理検査(確定診断)と一貫して行っているため、診察の段階でより的確な診断の予測ができます。診察の段階で悪性を疑う場合や全身麻酔での摘出が望ましい場合、詳しい検査が必要な場合は総合病院や大学病院へ紹介致します。
生まれつき・生後間もなく、あるいは思春期以降に発症する褐青色斑で、片側顔面に発症します。色素細胞(メラノサイト)が皮膚の深いところに集まってできるあざです。Qスウィッチレーザーで治療を行います。
おしりの蒙古斑が、生まれつきおしり以外に生じているものを異所性蒙古斑と呼びます。自然軽快が見られますので、特に濃い色調の部分や露出部などを早く薄くするためにQスウィッチレーザー治療が適応となります。
生まれつきの茶あざですが、思春期に発症することもあります。
表皮内のメラニン過剰産生が原因であり、治療はQスウィッチレーザーです。治療効果は限定的ですが、体への侵襲・リスクがある治療ではないので、レーザー治療を受けてみられるほうが良いと思います。
擦り傷や切り傷などのケガで、中に砂利などの異物が入ったまま治ると黒っぽい色が残ります。
Qスウィッチレーザーで色素を破壊することで異物の色調は改善します。
ケガの仕方・深さ・状態により様々な呼び方がありますが、どれも皮膚の損傷です。人間の組織が障害を受けると、「修復」と「再生」というメカニズムで治癒していきます。皮膚は表皮と真皮という二層構造ですが、損傷を受けたとき、表皮は再生していきますが(表皮は表皮で治る)、真皮は瘢痕組織(肉芽組織)で傷を埋めて治ります(修復)。つまり、真皮に至るけがの場合は、治るために瘢痕組織(肉芽組織)が形成されるため、これが傷あととして認識されます。擦り傷の多くは表皮の損傷なので傷あとになりにくいですが、切り傷など真皮に至る傷では傷あと(瘢痕組織)として治ります。形成外科では適切な初期治療(出血のコントロール・感染源となる異物の除去・時に縫合処置・日々の傷の処置方法)だけでなく、傷が治った後ケアまで一貫して治療し目立ちにくい状態を目指します。
皮膚の真皮・皮下脂肪に至るケガや手術の痕では、瘢痕組織(肉芽組織)という皮膚と構造が異なる組織で修復されるため「傷あと」として認識されます。傷あと(瘢痕組織)は一般的に成熟(コラーゲンの変化などで赤くやや硬い傷あとが白く柔らかくなる)するまでに半年程度かかりますが、その成熟過程において異常な瘢痕組織になってしまうことがあります。傷あとに緊張がかかりやすい部位(胸部腹部・膝などの関節部位など)やそもそもの体質によって、ケロイド・肥厚性瘢痕という、赤く硬く盛り上がった痛痒い傷痕になってしまうことがあります。整容的にも目立ち、なにより拘縮感(つっぱった感じ)がでてしまい社会生活の質を落とすことにもなります。
形成外科では創傷治癒の専門的知識から適切な治癒過程を促進し、創部に緊張のかかりにくいような縫合方法・術式を選択して異常な傷痕の予防を行うと同時に、もし異常な傷あとになってしまった場合の保存的・外科的治療も提供致します。
傷あとの場所や方向、もともとのケガや手術での皮膚欠損などによっては周辺の組織が引っ張られ、動きが制限されてしまうことがあります。
例えば、目元の傷あとで目が開きにくい・閉じにくい、指の傷あとでまっすぐ伸ばせないなどです。このような動きが制限される状態を瘢痕拘縮といいます。形成外科的な手技(皮弁形成や植皮など)を用いて可動域制限を緩める治療を行います。
ワキの皮下にあるアポクリン汗腺からの汗の成分と、皮膚表面の細菌が作用して特有の臭いを放つことをいいます。耳垢がじめじめしたり、シャツに黄色くシミがつくなどの症状がある方が多いです。腋臭症は、仕事・部活動や電車移動など社会生活するうえで心の負担となりやすい疾患です。
当院では、剪除法(皮弁法)を行っております。
腋臭症の治療方法は自費診療も含めるといろいろありますが、剪除法はにおいの原因であるアポクリン腺を直接見ながらすべて切除するため当然効果が高いです。傷あとが脇のしわに一致するように、目立ちにくいような切開の位置・縫合法などに留意して行っております。
爪が皮膚にくい込んで痛みを感じます。よくみかける原因は深爪と爪白癬です。原因と爪の状況を検討し、保存的治療(ワイヤー矯正など)か外科的治療(フェノール法)を提案致します。赤く腫れて浸出液が出てきてしまう重度な状態でも、食い込んだ爪と皮膚の接触を解消することで自然と落ち着きます。感染ではなく物理的接触が原因ですので軟膏や内服薬での改善は見込めません。